小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
そう言ったアイチに、シーやんが続く。
「わかりにくいんだよな」
確かに駅から亀戸天神までは口で説明しづらいかもしれない。
「多部ちゃん、それ1人で行くの?」
駆が横から聞くと、多部ちゃんは頷いた。
「はい。友達と予定が合わなくて」
「じゃあ、おれが連れてってあげるよ」
思わず駆を見てしまった。
アイチのいる前で、他の女の子と出かける約束はまずい。
けれど、それに気付いていないのか、駆はさらに続ける。
「おかんがくず餅食べたいってこの前からうるさくてさ。丁度いいから、一緒に行こうよ。電車は面倒だからバイク出すし」
ちょっと待ってよ、と思って、駆に視線を送った。
駆のバイクの後ろはアイチの指定席だし、いくら多部ちゃんとは言え、他の女の子と出かけるなんてまずいに決まっている。
「丁度、よかったね。行っておいでよ」
今度は思わずアイチを見てしまった。
彼女はいつもと変わらずニコニコ笑っている。
あたしだったら絶対に許せない。
勝ちゃんがニコッと笑っただけでも、こんなにヤキモチを妬いているのに。