小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
きっと彼女のことだから、デート中だったとしても着信に気付けばかけ直してくるはずだ。
「邪魔しちゃったかな」
そんな独り言を呟いてから、パンケーキの準備を再開させる。
昔はこうして準備をしているうちに、どんどんどうしていいかわからない気持ちが溢れてきた。
他の子のママになったお母さんとのレシピをまだ作り続けている自分をかわいそうに思っていたし、どうしても思い出してしまう暖かい記憶に1人浸るのも何とも言えない気分だった。
その頃のあたしは、お母さんの連絡先を知っていながらなかなか勇気を持てずに会えないでいたから、余計、そう思っていたようなところがあったのかもしれない。
もう今は、そんな風に思うことなく普通に作ることができるし、1人でだって食べられる。
高校2年生の時、アイチに背中を押してもらってやっとお母さんに会うことができたのが、自分の中の転機だったんだと思う。
それからはトロフィーを飾ることもできたし、パンケーキを作れるようにもなった。
そしていつか、お母さんとパンケーキの話ができたらと思うようになっていた。