小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


アイチからの電話が来たのはそれから1時間ほど後、丁度窓拭きを始めた頃のことだった。


「電話、出られなくてごめん。運転中だった。どうした?」


運転中、と言う言葉に「バイクに乗せて」と言うお願いがチラついたけれど、とりあえずそれはしまってから用件を言う。


「ごめん、大した用じゃないの。ただ、久しぶりにパンケーキ作ったから一緒に食べようかなぁと思って」


「食べたい!」


アイチはまず元気よくそう言ったけれど、その後に少しトーンの下がった声が続いた。


「けど、あたし今、新宿で買い物してるんだよね。でも、今度絶対食べに行くから!」


「新宿?1人で?」


バイクを出しているなら駆かシーやんが一緒かと思ったけれど、彼女は1人でいるようだった。


「久しぶりに行き先、決めないまま走りたくて。そしたら新宿に着いたからついでに買い物」


アイチらしいと思ったら、思わず笑いが零れてしまう。


「ちょっと、何、笑ってんの!?」


「え?いや、別に?」


「何?あたしが計画性のない人間だって?」


「はははっ、そうかもね」



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