小さい頃に習うこと、大きくなってわかること
それが聞こえていないはずはなかったし、もちろん、アイチがあたしを無視するようなことは絶対にない。
変に思ってもう1度聞こうとした時、アイチの声の方が先に入った。
「ごめん。新宿にいるとか、嘘ついた」
「え!?」
その後にはアイチが言うのをためらっているような変な間があって、あたしの不安はどんどん大きくなっていく。
アイチが嘘をついてまで行く場所。
それに何となく予想がついた時、アイチは静かな声で答えを言った。
「ディンゴのお墓参り行ってた」
あたしの予想は少しも間違っていなかった。
それを知った瞬間、頭の中が聞きたいことで溢れる。
ディンゴのお墓参りに行ってただけ?
あいつに会わなかった?
何もされなかった?
何か変わったことなかった?
大丈夫だったの?
そのすべてを一気に聞いてしまいたかったけれど、そんなことはできないから、その中から1つだけ選んで口にした。
「大丈夫だったの?」
不安でいっぱいのあたしとは逆に、アイチは明るく笑った。
「いつも何事もなく帰って来るじゃん」
「そうだけど…」