小さい頃に習うこと、大きくなってわかること


それから1年半が経った12歳の冬。


アイチはたった1人でこの街に戻ってきた。


体は傷だらけで、目は死んでいた。



小学3年生の時からいつだって彼女の側にいたディンゴは一緒に帰って来なかった。


向こうに置いてきたわけでも、誰かに譲ったわけでもない。


母親の恋人に殺されていた。



いつだって輝いていたアイチの目が死んでいるのは、保育園の時からずっと一緒に生きてきて初めて見た。


そして、あんなにも不安定な彼女を見るのも初めてだった。


だからその時に思った。


今度、アイチに何かしたらぶっ殺す。


そしてその気持ちは18歳になった今でも変わっていない。




アイチは笑って、今日あったことを話してくれた。


「半年ぶりに住職と神経衰弱やったんだけどさ、3回とも負けた」


負けた、と言いながらも彼女は嬉しそうだった。


「またやってきたの?」


「当たり前じゃん。行く度、勝負だもん!」


あたしはその住職に会ったことはないけれど、きっとものすごく優しい人なんだと思う。


「次は絶対勝つ!」


その声はすごく嬉しそうだった。



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