花の咲く教室
「…ふぅ…。」
カチャと音をたて収録終了の合図がなる。
それと共に白菜はバイオリンを置いた。
どう…して……?
これは紛れもない、“彼”自身のココロ。
私の出した音色は悲しい音色。
なのに…。
彼は音色を包んでもなお明るい曲に仕立て上げた。
これはまさしく“彼”という立場からでも、性格でも、ない。
――――――ココロから…?
きっと彼は気がついたのだろう。
私があの日に作られた歌を聞いたこと…。
だから…こんなにも暖かく、
――――――優しいんだね…。
彼は何一つ変わってなどいない、あの頃のままの、純粋な、そして優しい心の持ち主だった。
ガラスのハートはアクリルのハートへ、アクリルのハートは、太陽のハートへ…。
壊れやすそうな彼の心は、
私の知らない間にこうして暖かい心へと変化したのだろう。
「…先輩?」
心配そうに彼がわたしを見る目は、あの頃と変わっていないじゃない…。
どうして、あたしはこの子が変わったと思いこんだの…?
この子はこの子のまま…。