花の咲く教室



家の者は二人が会うのを嫌がっている。



だからあまり祐志も地下室には来れないのである。



「うーん…まぁ、ね。明日小テストがあってさー。」



「わかった。」



ボロォォォンン



そう言いながら“彼”はおもむろにその辺にあった楽器を弾いた。



「祐志」にはその楽器の名前がわからない。



「明日、お願いね。」



「うん。わかってるよ。」



「祐志…あのさ…。」



その言葉に、“彼”は楽器を置きCDをかけ始める。



それはただのクラシックだった。



「…気にしないで。」



「僕があのとき、お父様に食ってかからなきゃよかったんだよ、祐志には関係ないのに…。」



「でもそのせいで…。」



「僕が食いかからなければ祐志は祐志でいられたのに…」



「気にしないで…全部、僕が背負うから…」



「でも…おかしいよ、そんなの!
ぼくが悪いのに…僕はこうしていられて…。
関係ない祐志は祐志じゃなくなって…。
本当は祐志のほうがお兄さんなのに…。」



「お父様は「祐志」の…その芯の強さを買ったんだよ。
僕じゃ、ダメだ。」



「そんなことない…!
現に今はお父様のいいなりにだってなってないんだ。
だからもうすぐ祐志が祐志に戻れるよ。」



「そんなことしても…お父様は変えやしないよ。
「祐志」がつらくなるだけなんだ。」



「でも…。」



< 77 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop