花の咲く教室
家の者は二人が会うのを嫌がっている。
だからあまり祐志も地下室には来れないのである。
「うーん…まぁ、ね。明日小テストがあってさー。」
「わかった。」
ボロォォォンン
そう言いながら“彼”はおもむろにその辺にあった楽器を弾いた。
「祐志」にはその楽器の名前がわからない。
「明日、お願いね。」
「うん。わかってるよ。」
「祐志…あのさ…。」
その言葉に、“彼”は楽器を置きCDをかけ始める。
それはただのクラシックだった。
「…気にしないで。」
「僕があのとき、お父様に食ってかからなきゃよかったんだよ、祐志には関係ないのに…。」
「でもそのせいで…。」
「僕が食いかからなければ祐志は祐志でいられたのに…」
「気にしないで…全部、僕が背負うから…」
「でも…おかしいよ、そんなの!
ぼくが悪いのに…僕はこうしていられて…。
関係ない祐志は祐志じゃなくなって…。
本当は祐志のほうがお兄さんなのに…。」
「お父様は「祐志」の…その芯の強さを買ったんだよ。
僕じゃ、ダメだ。」
「そんなことない…!
現に今はお父様のいいなりにだってなってないんだ。
だからもうすぐ祐志が祐志に戻れるよ。」
「そんなことしても…お父様は変えやしないよ。
「祐志」がつらくなるだけなんだ。」
「でも…。」