ひかり。



「ご飯できたわよー!!」




家中に響く程の
翔くんのお母さんの
大きな声で、
あたし達は下へおりた。





テーブルには
数々の手料理。





―なにこれ…美味しそう。




あたしにとったら
溢れんばかりの料理の数は

暖かい家族の象徴で、

まだ遅くない時間に
家族が揃ってるのは、

あたしがどんなに
願っても叶う事の無い事。



こんなに
暖かいのはじめてで、
正直緊張と戸惑いで
大変だった。



けど確実に幸せで
ずっとここにいたいって
本気で思った。







だけど…

今はどんなに幸せでも
時間がたったら帰らなきゃ。





―あたしには帰る家がある。




どんなに自分を
受け入れてくれない家でも、
住所があれば自動的に
それがあたしの帰る家になる。



昔は拒絶して、
家出は何回もした事がある


けど、それにも限りがある。

友達の家に泊まりあるくのは
限界があるし、外オールには
長期に考えるとつらい。

だからと言って
身体を売るような、
自分を下げる事だけは
したくなかったし。



だから、何ヶ月かは
保ってもいつかは
家に帰る日が来る。


―現状が変わらないまま。


そんな無意味な事は
とうに飽きていて


今の家庭に諦め

必死に拒絶する足に
ムチをうち帰る。




そんな毎日が続いていた。




そして今日も―。



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