短編■ 逆上ギャップ




『俺のこと好き?』

そう尋ねる進から露骨に目を逸らした。

すると、必然的に本当についさっきまで居た場所に視線が動いていて――


耳まで赤いのかもしれない、いや、首まで赤いのかもしれない。

知らない、と聞こえないふりをしたのに、『ははっ、可愛いな』と、屈託なく笑う進。

好かれている自信はなかったけれど、好かれているのだとよく分かった。

(…。)


『…やっぱり期待通りだった。礼子さ、そのままで居てよ? 変に喋りとか可愛い子ぶらないで良いから』

…なんて言う。


なんだかまんまと嵌められた気分だ。一枚も二枚も上手。


(……微妙)

背中の骨が痛いと言うと、床は硬いから当たり前なのだと移動してくれなかったし。

電気を消してと言うと、照れる顔が見たいからと消してくれなかったし。

もう疲れたと言うと、好きだと言うなら止めてやると言うから好きだと何回も言ったのに、全然嘘だったし。

(……なんか)


悔しくておもいっきり目尻を吊り上げ睨むと、眉を持ち上げて進は余裕たっぷりの表情を作ってみせた。

ついさっきまで私の唇に触れていた唇がゆっくり開いて――


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