短編■ 逆上ギャップ
『は? やだ、話すことないし』
可愛いげなくフンと目を閉じる私の様子に何も思わないらしく、カチカチメールを叩く音が響いた。
恋愛時の進の性格は素っ気ない。
普段はアツイ癖に(深夜に失恋した友達に駆け付けて河原で話を聞いたり、そんなに仲良くない女子が休んでも授業ノートを書いてあげたり)、
クラスに馴染めない私の彼氏となり付き合ってくれたり――…
*
『ぎゃあ!! 五木さん!!ごめん!!ごめんね!!』
顔面蒼白で謝罪をするのは、同じクラスの関村さん。
『別に』と、一言で終わらせて、『ばかーっ殺されるよ?!』と去り際に関村さんの友達に囁かれるのが、この私。
うっかり弾みで机にぶつかり、筆箱を落としたくらいで殺すなんて、それはどういうクレーマーなのだろうか。
(はあ?!私そんなキレ芸じゃありませんからー!!!てか全然気にしてないんですけど)
“大丈夫だよ”ではなく、“別に”と言ってしまう私は本当に可愛くない。