短編■ 逆上ギャップ
『……早くかけ直せば?』
本当はヤキモチ妬きだけど、平然を装い口にした。
そして『ありがとう』と電話を始めた進を気にしないフリをして、漫画に手を伸ばす。
進は知らない、私が聞き耳を立てていたことを。
だから――――
*
『わたし!! 進くんのことが好きなの!!』
“翌日、放課後、四時半、靴箱”
告白現場に私は居た。
進はなんと答えるのだろうか。“ありがとう”なんてお礼を言うのだろうか。
押しに弱い進は断ることが出来るのだろうか。
不安になる私を救ったのは――…
『俺、礼子と付き合ってんだよね』
誰でもない大好きな人の言葉。
良かったと思った。ほっとした。見切りをつけて乗り換えられなくて良かった。
相手の女がさっさと退散すれば、偶然を装い進に話し掛けよう。
そして、“好きだよ”くらい言おう。言わなければ。可愛いげがないといつか愛想を尽かされてしまう。
これを機会にラブラブカップルになろうと考えていると―――