短編■ 逆上ギャップ


『……早くかけ直せば?』


本当はヤキモチ妬きだけど、平然を装い口にした。

そして『ありがとう』と電話を始めた進を気にしないフリをして、漫画に手を伸ばす。


進は知らない、私が聞き耳を立てていたことを。


だから――――





『わたし!! 進くんのことが好きなの!!』

“翌日、放課後、四時半、靴箱”


告白現場に私は居た。

進はなんと答えるのだろうか。“ありがとう”なんてお礼を言うのだろうか。

押しに弱い進は断ることが出来るのだろうか。

不安になる私を救ったのは――…

『俺、礼子と付き合ってんだよね』


誰でもない大好きな人の言葉。

良かったと思った。ほっとした。見切りをつけて乗り換えられなくて良かった。

相手の女がさっさと退散すれば、偶然を装い進に話し掛けよう。

そして、“好きだよ”くらい言おう。言わなければ。可愛いげがないといつか愛想を尽かされてしまう。

これを機会にラブラブカップルになろうと考えていると―――


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