羊を被った狼

それからは、
狼にとって楽しい日々になりました。
昼はみんなと牧草地を駆け回り、
夜はみんなで寄り添って寝ました。
怪しまれないように狼は精一杯気を使って、
本当は肉が食べたいけど羊の真似をして草を食べました。
どうしても我慢できないときは、羊小屋に迷い込んできたネズミを夜中にこっそり食べて紛らわせました。
狼はどうしてもこの暮らしを失いたくなかったのです。



そんなある日。
いつものように牧草地で羊たちとくつろいでいると、
みたこともない茶色の獣が現れました。
なんだか顔つきが猫に似ていますが
ずいぶんとそれは大きいです。
狼はその鼻のよさで獣から血の臭いを嗅ぎつけました。
みるとずいぶんお腹も減っているようです。どうしようか困っていると
突然、子羊に向かって獣が突進しました。
慌てて散り散りに逃げる羊たち。
呆然と立ち尽くす狼に子羊が叫びます
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