羊を被った狼


酷く乾いた音が数発、
空に木霊しました。
争っていた二匹の獣がどさり、と重い音をたてて倒れました。


一瞬、呆けてしまった羊たちが、
慌てて狼に駆け寄ってきました。


オーラ!


当然羊の言葉などわからない主。
ビックリしたものの慌てて羊たちの邪魔をします。

こ、こら、
何をしているお前たち!
早く小屋へ戻れ!


主のムチに追い立てられてすごすご羊たちは小屋に戻ります。
その間も狼の名前を呼び続けます。


オーラ!!
オーラぁ!
ォーラ………



狼は薄れゆく意識の中で思いました。
これは羊たちを欺いた報いだと。
どんどんと冷たくなっていく体。
しかし狼の心は温かでした。
羊たちが無事でとても嬉しく思えたのです。

狼の意識は完全に途切れました。
けれど、
無念な最期を遂げたはずの
狼の横顔はなんだか
とても安らかでした。



おわり
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