ひこうき雲
それからしばらくして、
あたしもバイトに慣れて
少し、余裕が出てきた。
バイト先の人の名前と顔も
徐々に覚えられてるし。
うんうん、なんかいい感じ。
休日はどっちか必ずバイト、
平日も学校終わりにバイト。
毎日がそんな繰り返しになった。
接客って……
確かに疲れるしストレス溜まるけど
やり甲斐がある。
なんか、楽しいかもっ!
「お疲れさん、頑張ってるね」
「お疲れ様でーす……えっと、野田さんっ!」
商品を出しながら
顔をあげると、そこには野田さんが立っていた。
最近話すようになって
よく声をかけてくれる。
バイトの女の子たちの間でも
しょっちゅう話題になるくらい
イケメンな先輩だ。
よく笑うそのなつっこい笑顔が
モテる秘訣なのかも?
そして、話しやすく優しい。
「もうバイト慣れた?」
残りの商品が入った段ボールを
持ち上げながら野田さんは言う。
「はい、だいぶできるようになりましたよ!ってゆうかそれ、あたし片付けますよ。野田さんの仕事増えちゃいますし…」
もともとはあたしが頼まれてたんだし…。
歩き出す野田さんを追った。
「こんな重いの、女の子に持たせて先帰れるかよ」
そう、
野田さんはこんなセリフを
たやすく言えちゃったりもする。
"女の子"
なんだかやけに
胸に響いた。
「…すいません、ありがとうございます」
あたしはもう、
何も言わずに野田さんの後についていった。
任せとけ!
もっと頼っていいんだぞ
って。
本当に頼もしかったんだ。