完全秘密主義恋愛♥
あたしは背中を支えてくれている手からスッと離れると廊下に出た。
戸梶さんや他の内装の人たちは怪訝な目であたしたちを見た。
「……ここ邪魔だから、とりあえず出て」
いつもは出ないような自分でもびっくりするような冷たい声で山根 和樹に言った。
「…やっぱり来ないほうが良かったかな…?」
はは、と山根 和樹が哀しそうに力無く笑った。
「そんなこと言わないで」
バッとあたしは山根 和樹を見上げて(半分睨んで)言った。
山根 和樹は「…ごめん…」と、言うと教室の入り口から離れて廊下に出た。
安藤はただならぬ空気を感じたのか、戸梶さんたちに先に宣伝に行っているように頼んだ。
戸梶さんたちも不思議そうな顔をしていたけど、快く頷いてくれて先に行った。
どうしよう、迷惑かけちゃった。
人混みの向こうに消えていくみんなの背中を見た。
けど、それよりもあたしはこの男との関係をみんなに悟られる方が堪えられそうにはなかった。
安藤がもはや冷戦状態のあたしたちに見兼ねて、仕方なくといった様子で重い口を開いた。