幸せになりたい。

「ちえ…こっちこいよ」

「うん」


二人きりのときは"カス"でも
"お前"でもなく"ちえ"。


「キスしたい」

「やだ」

いつもの仕返し、のつもりで
あたしはやだの一点張り。


「ちえちゃ〜ん」
「やーだー」

塾ではありえないくらい
甘えてくるのも二人きりの時だけの、あたしの特権。


「ほんとに嫌?」


かと思ったら、いきなりあたしの顔を押さえて触れるか触れないかくらいのキスをしてくる。

その瞬間あたしはもう真っ赤。

「嫌…じゃない」

「よく言えました。」


ぽんっと頭をたたかれて

「ほんっとドS…」

呟いた瞬間、すぐに熱いキスが降ってくる。



「…んっゆう…きっ……」


「ちえ…かわいい」


笑いながら余裕たっぷりに言う勇気。


「かわいい子、塾にいないんじゃないんですかー」

拗ねてるあたしは余裕のかけらもない。


「ちえは特別♪」


そしてまた特別なあたしだけに
くれる長い、長いキス。


ほんとに溶けそう。
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