タビタチノトキ
「あおいちゃん…だよね?」
「うん…」
そのときは初めて、声をかけられた嬉しさと人と話す緊張感が
ハンパなく…しどろもどろだったと思います。
「いつも、手ぇ繋いで歩いてる男の子…お兄ちゃん?」
「ううん。違うよ」
その一言がクラスの女子に聞こえたらしく…
「うそっ!あの、男の子あおいちゃんのお兄ちゃんじゃないの!」
「違うよ…」
「くそぉ…お兄ちゃんだと思って我慢してたのにぃ」
我慢って…何を?
「超格好良くない?あの子!」
「3年生でしょ?」
「まじぃ?隣じゃない?」
なんか、一気に人が集まってきて…
そのときはなんか、怖かった気がする…。
「おっ、ちびっこいなぁお前!」
春くんの声!
憧れてただけあって、春くんの声には敏感になっていた。
「あっ…ウワサをすれば…」
我慢してた子が言った。
「なにが?葵ちゃん、俺のことウワサしてたの?」
「お兄さん、超格好いいよねぇ」
我慢してた子は春くんに向かって、上目遣いをした。
腹が立った。でも、我慢した。
春くんの前だったし…友達になれるチャンスだったから。
「葵ちゃん!この子…どうしよう…俺、どうしたらいい?」
「ぷっ…アハハハハハ」
吹き出したとたん、笑いが止まらなくなって、
困ってる春くんに向かって爆笑してしまった。
「…////」
それを見て、男子の顔が赤くなった気がしたのは
気のせいだろうか。