水色のエプロン
私がそう言うと、ミルはうんと縦に首を振った。
 ブローが終えると、脚回りの毛をカットした。後脚は跳接より下の毛を整え、前脚もパッドよりはみ出る毛を整える。飾り下もバランスよく。胸とお尻、アンダーラインから不規則に飛び出す毛も、隙バサミで少し整えた。耳先は六分の一先端にハサミを入れ整える。
 すっきりとバランスのいいきれいなワンちゃんの出来上がり。
 トリミングが終わったことがわかると、ミルはトリミング台の上でくるくると回りだした。
「嬉しいのは解ったわ。だけど台の上で廻って落っこちたら大変だわ。台の上で廻っちゃだめよ。」
 私はミルの左耳の手前にリボンを付け。ゲージに入れた。ミルはゲージの中でもくるくると廻っていた。
「見てるこっちが、目が回りそう・・・。」
 今日の午前中はミル一頭だけだった。
 ひと段落着いた丁度のその時、お店の電話が鳴った。
「予約の電話かな?」
 私は受話器を取った。
「はい、フレンドです。」
「どうも先日お世話になりました。小沢と申します。」
「あ、フレンチブルドッグのモモちゃんのお母さんですね。」
 モモちゃんのお母さんからの電話の内容は、こうだった。病院に連れて行った結果やはりモモはヘルニアだったということ。手術をして、それが成功すれば直ると獣医さんに言われたということ。
「もう少し遅かったら、歩けなくなっていたかも知れないと、獣医さんに言われたわ。見つけてくれて本当にありがとう。」
 勇気を持って、ワンちゃんの飼い主さんに伝えたことが、モモを助ける結果となった。私は電話を切ると、とても嬉しい気分になった。
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