水色のエプロン
「ねぇ、フレディー、モモの脚、手術をして直るんですって。」
 いてもたってもいられず、私はその電話の報告をフレディーに聞かせた。
「それはよかった。アズのおかげだな。」
 フレディーのその一言もまた少し私に勇気を与えてくれた。
 やがてミルのお迎えが済み、私はミルの飼い主さんに、抜け毛のお手入れの仕方を教えた。ミルはしっぽを振りながらお店を後にした。それから掃除をして、お昼を食べて。午後の準備をすませる。
「次は午後一番でビーグルの野田バークレイのシャンプーが入っているわ。いったいどんな子かしら。」
「バークレイ?あの荒くれ者の。うぅ~嫌だね。」
 私が次に予約の入っていたバークレイの名前を読み上げると、フレディーはとたんにお店から出て行こうと立ち上がった。
「え?荒くれ者?」
 フレディーは私の質問には答えず、さっさと裏庭に出て行ってしまった。
「ちょっと、フレディー!荒くれ者ってどうゆうことよ?」
「まぁ、あいつも悪気はないんだ、頑張れよアズ!」
 裏庭を覗くと、フレディーは犬小屋からしっぽを出したまま頭を隠しもごもごと、かろうじて聞こえるほどの声で私にそう言い放った。
「悪気は無いってどうゆうことよ。」
 裏の庭の扉を閉めて、店に戻ると丁度いいタイミングで、野田さんがバークレイを連れて来店した。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」
「野田バークレイです。シャンプーをお願いします。手が掛かると思いますがよろしくお願いします。ちょっと用事があるので、二時間後に迎えにきます。」
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