水色のエプロン
バークレイはふて腐れたように唸ってみせる。
「だめったらダメ!」
 往生際が悪いところも、多少強情な面も伺えているところも、立派なビーグルの特徴の一つだった。もともとは猟犬だけに気の強さを兼ね備えているだけあって幼年期のしつけを徹底することもたいせつな犬種だ。
「どうして言うことを聞いてくれないのよ。」
 バークレイのことを、荒くれ者と言ったフレディーの言葉を反芻した。そして悪気は無いという言葉を・・・。
「そうだ、こんな時は・・・。」
 ため息を付く前に、私はモモに教わったことを思い出していた。
「わかった。おとなしくして終わったら、ご褒美をあげるわ。頑張ろうバークレイ。」
 以前のわたしだったら、イライラしていたかも知れない。だけど今日の私は昨日の私とは違う。
「ほんとか?いったいどんなご褒美を俺様にくれるって言うんだ?」
「それは後でのお楽しみ。さぁ、前を向いてしっかり立って。」
 私は、ドライヤーのスイッチを入れバークレイの体に当てた。ご褒美のことで頭がいっぱいになったバークレイは、おとなしく前を向いてステイのポーズを保っていた。
「偉いわ。バークレイ。そうやってしっかり立っている姿はとても精悍でカッコいいわ。」
「精悍ってどういうことだ?」
「たくましくって勇ましいってこと。さすがスヌーピーのモデルになるだけあるわね。」
 私は優しくバークレイの頭をそっとなでた。
「そ、そうかなぁ。俺様そんなにカッコいいか。」
 バークレイはしっぽを振っていた。ほめられることはやっぱり誰だって嬉しい気分になるのだ。
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