水色のエプロン
その時突然、バークレイはまるでおもちゃのぬいぐるみに飛びつくように、私が外して手に持った水色のエプロンに飛びついた。
「やめて!バークレイこれは大事なエプロンなんだったら!」
 バークレイはエプロンに噛み付きそれを離そうとはしなかった。
「お願いだったら、放して、これがなきゃ、私はみんなの言葉を聞くことができないの!。」
 バークレイから取り戻そうとすればするほど、バークレイも力を入れてエプロンを引っ張った。
「ウーガウガウ。」
 バークレイは唸り声を上げながらエプロンを強く引いた。
 お互いが力を緩めることなく、それを自分の物にしようとしたとき、ついに水色のエプロンは、鈍い音を立てて二つに引き裂かれた。

 古ぼけて痛んだエプロンは、一度裂け目が生じると、綺麗に二つに破け、私とバークレイを引き離した。
 私はその場に尻餅をつき、バークレイはエプロンの片割れを振り回して、満足げにしっぽを振っていた。
「信じられないわ。返してよ!」
 真剣に怒る私の気持ちを読み取ったのか、今までふざけモードだったバークレイも、私のその一喝に口からエプロンを離し、しっぽを下げて私を見つめた。
 私はもう一方のエプロンの切れ端を拾い上げた。
そしてバークレイの首輪をつかみ裏口から店に入ると、バークレイをゲージの中に入れ、今度は自分で扉を開け逃げ出さないよう、頑丈に二重にロックをかけた。
私は椅子に座り、二つに裂かれたエプロンを見つめた。

「もう、二度と声が聞こえないの?」

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