水色のエプロン
「なんで?急激な運動でもさせたの?変なものでも食べさせたの?どうしてネオがこんなふうに?」
 お母さんが悪いわけではないことは解っていた。なのに、私はぶつけることのできない感情を、思わずお母さんにぶつけてしまった。

「ちょっとネオと二人きりにさせて。」
 私がそう言うとお母さんは静に席を外した。

「ネオ・・・。」
 私はネオのすぐ傍らに膝をついた。
 二人きりになった瞬間、堪えきれなくなった涙が溢れ出した。
「どうしちゃったの?ネオ。」
 横たわるネオの体に手をやると、私の手が、柔らかいネオの白い被毛にふわりと包まれた。
「お願い、いつもみたいに元気になって。」
 だけど、ネオのか細い息は、今にも消えそうな蝋燭の炎のようでしかない。
苦しそうに、力なく横たわるネオ。昨日も、一昨日も、ネオに冷たくしたことばかりが頭に浮かんだ。
「ごめんね、ネオ、ずっと一緒にいるって約束したのに。寂しい思いをさせちゃったよね。」

 私はネオの頭をそっとなでた。
「何処が苦しい?」
 ネオは黒い小さな瞳で私を見つめた。黒くうるんだ瞳は、まっすぐに私を見つめていた。

 ネオが、もし、このまま死んじゃったらどうしよう。
考えたくない思いが頭を過ぎる。
私は何処まで自分勝手なのだろう。
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