水色のエプロン
この手伝いが終わったら何か違う仕事をしよかな・・・。
 それは同時に私の中でトリマーをやめるという意味を持っていた。

 私はどこかでそう思い始めていた。
「よし。これが最後になるのなら、最後ぐらい頑張ってみなくっちゃね。」
 私は立ち上がりズボンに付いた芝をはたいた。
「フレデリック、お願い、どうしても鍵のある場所を教えて欲しいの。」
 フレデリックはチラリとこっちを見たようだったけど、またフンと鼻を鳴らして瞳をとじた。
「ああぁ~もう、、。お願いだったら!あたしのお弁当のハンバーグをあげるから、ねえ教えてよ!」
 その瞬間フレデリックは黒々とした目を開き起き上がり、のしのしと私のほうへと歩み寄った。
「なに?」
 その貫禄に、私は思わずたじろいだ。
「ごめん大きな声を出しすぎたかな?」
 ご機嫌を取ろうとする私なんかに見向きもせず、フレデリックは私の脇をゆっくりと通り抜けて行った。
 私はフレデリックの行く先を目で追うのが精一杯だった。
 のしのしと、フレデリックの向かう先にはあの大きな赤い屋根の犬小屋があった。彼はそのまま犬小屋に頭を突っ込むと、もごもごと何かを探している様子だった。私はその行動を静に見守った。
しばらくすると、フレデリックは犬小屋から顔を出し、何かをくわえて私の元にやってきた。そして私の足元で、口にくわえた何かを私にゆっくりと差し出した。
< 17 / 132 >

この作品をシェア

pagetop