水色のエプロン
「あ、ありがとう。」
 私は反射的にそう言って、フレデリックからそれを受け取った。
「ペンダント、、。」
 シルバー鍍金のペンダントにはsince1999と刻んであった。そしてその先には、古びた鍵が付いていた。
「これが鍵ね。」
 私はすぐに店の裏口に駆け寄り、この鍵を鍵穴に差し込んだ。

 扉を開けるといい匂いがした。
「ペットサロンなのに凄くいい匂い。」
 レジの横にアロマキャンドルが置いてあった。きっとこの匂いね。私はもう一度深呼吸をした。その匂いはなぜか心を落ち着かせた。
 お店の中には少しのフードとリード、洋服なんかが売っていた。そのどれもがお洒落なもので、私はますますこの店のオーナーさんがどんな人なのだろうと興味がわいた。
 店長が私に渡した地図ともう一枚、オープンからラストまで何をするべきかを書いた紙を貰っていた。私はまず店の奥に荷物を置き、その紙の通りに仕事を開始することにした。
 オープン前の準備にすることはほとんどが掃除についてだった。だけどお店は凄く綺麗にされていたから、店内の掃除はあっという間に終わらせることができた。そしてトリミング室の準備をして。
「後は、お客さんを待つだけね。」
 次に、カウンターの電話の横に予約台帳が置いてると書いてある。
 私がその通りに電話の横を確かめると、そこに赤いファイルが置いてあった。私は恐る恐る今日7月13日のページを開いた。
 そこに書いてあった物は、
十時半から、伊藤小太郎(柴犬)シャンプー
十二時半から、小林キヤンディー(チワワ)部分カット
二時から、野崎ロビン(MIX)シャンプー
 と書いてあった。三頭分の予約。でもホットしたのはカットの予約が入ってなかったことだった。
カット、本当はしてみたいけど、一人で仕上げるなんて自信なんてかったから。
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