水色のエプロン
「そうですね。今は丁度ワンちゃんの換毛の時期なので、抜け毛が多く見られる時期です。」
「やっぱりそうなの、他のワンちゃんも?小太郎だけじゃないのね。」
「はい。」
 私は伊藤さんににっこりと微笑んだ。
「特に柴犬のように短毛のワンちゃんは、毛量も多く、毛が短い分抜け変わるまでのサイクル、毛周期が短いので沢山抜けるように感じるんです。」
「あら、それはどうにかならないのかしら。」
 伊藤さんは頬に手をあてて困った顔をしていた。
「大丈夫です。ブラッシングをよくして、確り余分な毛を取り除いてあげれば。抜け毛はそれほど気にならなくなります。そして、また冬に、いい毛が生えてきてくれるようになりますよ。」
 伊藤さんが微笑んでくれた。
「それでは小太郎ちゃん、お預かりいたします。」
 私は伊藤さんの握る小太郎のリードを受け取った。
「ありがとう、お願いするわね。」
「はい。」
 私はにっこりと微笑んだ。伊藤さんは初めて会った私に安心してくれたように小太郎を預けてくれた。なんだかそれが凄くうれしかった。
 伊藤さんは静に私に背を向け、店を後にした。
「行こっ。小太郎、こっちだよ。」
 小太郎は、自分のご主人である伊藤さんの後姿をじっと見つめていた。
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