水色のエプロン
薄暗い二階の窓には、ブラインドが掛かっていた。昼間なのに薄暗い部屋、私はその光をさえぎるブラインドを開けた。
「わぁ~凄い。」
 その窓からは南房総の海が一望できた。フレンドは高台に面していた、視界をさえぎるものは何も無かった。
「この窓は、特等席ね。こんなに海が綺麗に見えるなんて・・・。」
 思わず海の素晴らしさに見とれてしまっていた。
「はっ、こんなことしている場合じゃなかった。エプロンを探してたんだったわ・・・。」
 私は部屋の中を見渡した。すると二階のその部屋には、どこかのドッグショーの写真だろうか、ハンドラーがプードルを引く写真がいくつも飾ってあった。そして本棚がありそこには犬の図鑑や本が所狭しと並んでいた。痛んでもう使われていない道具まで、丁寧に保管されていた。使い捨ての世の中なのに凄く道具を大切にしていることが伝わってきた。その古い道具一つ一つがかけがえの無いものに感じる。
「痛んで使わなくなった道具のはずなのに・・・。」
 こんなに大事にされている。壊れたら捨てる、無くなったらすぐに買う、自分のそんな薄い物への執着心を恥ずかしく感じた。
「私も、もっと大事にしなくっちゃ、、。」
 そう思いながらエプロン探しを続行した。
クローゼットをあけタオルやリードの入った箱を一つずつ探した。だけどトリミングの道具や売れ残った商品ばかりで、肝心なエプロンはやっぱり見つからない。
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