水色のエプロン

私を変える出来事。

「梓ちゃんにちょっとお願いがあるんだけど。」
 突然店長は私にそう言った。
 店長のお願いって言ったら、ろくな話は無いってわかっていたから、私は店長に、やる気のない返事を返した。
「何ですか・・・。店長のお願いって。」

「館山駅の近くに、フレンドって言う古いトリミングサロンがあるんだけど、そこのオーナーのおじいさんが体調を壊しちゃって、トリマーさんがいなくなっちゃったのよ。そこでオーナーさんの体調が戻るまで、梓ちゃんちょっとそのお店に行って、しばらくトリマーをしてきてくれないかな?お手伝いだと思って。」
いつもの事ながら店長のとっぴょうしもない話に驚かされる。
つい先月だって店長はもじゃもじゃの黒い犬を連れて、「この犬はプーリーよ」だなんて言うから、私はその言葉を信じ、始めてプーリーを見たことに不覚にもはしゃいでしまった・・・。すると「この犬丸刈りにして!」と店長。イザ、私が注文通りその犬を丸刈りにしてみると、その黒い犬はトイプードルそっくりだった。思わず私が店長に
「プーリーの毛を刈るとプードルそっくりなんですね」って言うと、店長は大笑いして「そりゃそうよ、その子はただず~っとトリミングしてなかっただけの、もじゃもじゃの黒いトイプードルだもの。」って・・・。
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