水色のエプロン
「ねぇ!フレディー!」
 お弁当の包みを元にも戻し、私はソファーの後ろからフレディーの姿を覗き込んだ。
「何だよ、アズ・・・。」
 フレディーは片目だけチラッと開けてこちらをみて、うっとうしそうにそう言った。
「折角話せるようになったんだから。もっといろいろお話をしましょうよ。で、いつからお話が出来るようになったの?」
「いつからって、オイラはずっとこのままさ。」
「ずっと?気づいた時から人の言葉がしゃべれたの?」
「さぁね、、。でもオイラは、いつもずっと変わらないままさ。」
「じゃぁ今朝も私に話しかけたりしていたの?」
「もちろん、ハンバーグをくれるって言った時にちゃんと念を押したはずだよ。約束だからねって。聞こえなかった?」
「聞こえなかった・・・。」
「じゃぁちゃんとオイラの声に耳を傾けてなかったってことなんじゃないか?」
「え?」
 私は今日の朝のことを振り返った。だけどいつもと変わらず、思い当たるふしは無いように感じた。でも私は誤ることにした。
「ごめんね。これからは・・・。」
 その時また、お店のドアを開けるベルが鳴った。
「いらっしゃいませ・・・。話の続きはまた後でしましょ、フレディー。」
 ブラックタンのチワワを抱いた、若い女の子がやってきた。
「予約をしていた小林キャンディーです。」
「はい。シャンプーコースと部分カットのご予約ですね。」
「そうです。あのぉ・・・。今誰かとお話してませんでした?」
 小林さんは私しかいない店内を見渡して不思議そうにそう私に質問をした。どうやらフレディーとの会話を少し聞かれてしまったらしい。
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