水色のエプロン
「あ、今このフ・・・。あっいや、何でもないんです。ただの一人ごとです。気にしないでください。」
 フレディーとお話をしていた。そう私は言いかけたけど、すぐに思いとどまり。誰にも言わずに内緒にしようと思った。
この素敵な出来事は、私だけの秘密にしよう。私は自分だけの宝物を見つけたような気分だった。
小太郎を預かった時と同じように、私は小林さんに注文内容を聞いた。注文はシャンプーコース、部分カットの内容は飾り下を短めにカット、というものだった。気になることは特になし。
「でも最近わがままになってきちゃって、たまに人の手を咬もうとすることがあるんです。気をつけてくださいね。」
「解りました。それではキャンディーちゃんお預かりいたしますね。」
 心の中では(えっ咬むの!?)って思ってしまったけど、なるべくキャンディーの機嫌を損ねないように終わらせようと私は心に決めた。
 小林さんが店を後にするのを見届け私はトリミング室に移動した。
「さぁ、キャンディー綺麗になろうね。だけど咬んだりしないでね。」
 トリミング台にキャンディーを載せ私はそう言った。
「こんなに可愛い顔をしていても噛つくんだもんな・・・。チワワって怖い。」
 チワワやパピヨンは小さくても気が強い性格の子が多い。もちろんいい子も沢山いるけれど血統的にも頭がよく、しつけ次第でわがままになる子も多いのだ。
キャンディーはつぶらな瞳でこっちを見つめていた。どうやらキャンディーも私のことを窺っているようだった。
「そうだ、カルテには何か書いてないかしら。」
 私はキャンディーのカルテの備考欄を見た。
よい子だが爪きりが苦手。
お尻の毛をすっきりカットとかいてある。
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