水色のエプロン
首にリードをかけていたおかげで咬まれずに済んだ。だけど私はキャンディーに口輪をかけることにした。
　噛み付く犬には専用のサイズの合った口輪がある。トリマーが咬まれないためにも、犬が道具に噛み付いたりして怪我をしないためにも、口輪という道具はとても重要な道具だ。口輪をするなんてかわいそうって思う人もいるようだけど、口輪はワンちゃんの安全を確保するためにも重要なのだ。
「これでもう咬んだりは出来ないわよ！」
　私はキャンディーの爪切りを再会した。口輪をつけると咬めないことを理解したのか、さっきのようにダイレクトに噛み付こうとはしなくなった。
「よし、いいこね。だけどそんなに唸ったりしないで。」
　私は爪切りをもう一度続けた。だけどキャンディーは抵抗した。飛んだり跳ねたり、蹴ったり唸ったり。仕方なく私は小さなキャンディーを押さえつけることにした。
「キャンディーいい子だからそんなに暴れたりしないでよ。」
　ぎゅっと押さえつけて爪切りを爪に当てた瞬間、耳を疑う声が聞こえた。
「ややややめて！やだやだやだきゃーやだってばぁ！怖い怖い！」
「えぇ！？」
　私は思わずキャンディーを抑える手を緩めた。
「怖い怖い痛いのやだ～！」
　それは間違いなくキャンディーの声だった･･･。
「もしかしてあなたも口を聞けるの？それとも私が犬の声が聞こえるように･･･？」
　呆然としているとトリミング室の隙間からフレディーが顔をのぞかせた。
「何をしてるのさ。」
「フレディー、キャンディーが爪切りを嫌がるのよ。それにキャンディーのいやだって声が聞こえるの。」
「当たり前だよ。おいら達にだって、人間と同じ感情ってもんがあるんだから。嫌な事を無理やりやろうとされたりしたら、だれだって嫌だし、怖いって思ったりもするだろ。」
　確かにフレディーの言っていることは正しいことのように感じられた。
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表紙・目次

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