水色のエプロン
「そりゃもう。アタチのママは、一日のほとんどをお出かけしちゃってるんだけど。アタチはママが帰って来るまでずっとお留守番してなきゃならないの。そんな時に思うの、こんなおもちゃがあってそのおもちゃと一緒にあそんでいられたらなって。」
 キャンディーの目は何処と無く寂しそうに見えた。
「要するに、一人ぼっちの時の遊び相手がほしかったのね。」
 私はキャンディーの目を見てそう話しかけた。
「それで、ママの手をかもうとしたりしたの?」
 さっきキャンディーを預かるときに聞いた言葉を反芻し、私はもう一度キャンディーに問いかけた。
「だって一日中つまんない思いをしていて、ママが帰ってきても疲れてアタチと遊んでくれない日だってあるんだから・・・。」
 キャンディーはそう言ってぷいっとそっぽを向いて、またおもちゃをブルブルっと振り回した。
「わかった。ママにそのことを伝えておくから。もう手をかもうとしたりしちゃだめよ。ママはキャンディーのこと誰よりも大好きで、大切な存在なんだからね。」
 キャンディーはおもちゃを口から放しこちらに向き直った。
「それ、ホント?」
「本当よ。だからこれからもママと仲良く暮らすのよ。」
 とたんにキャンディーはしっぽを振り出した。
 それから数分経ち、小林さんがキャンディーを迎えにやってきた。
「お待ちしておりました。」
 にこやかに小林さんを迎え入れると、まず最初に小林さんが口にした言葉は、咬まれませんでしたか?という物だった。それを聞いて私は小林さんにさっきキャンディーから聞いた話を伝えることにした。
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