水色のエプロン
フレディーの鼻先に目をやるとそこには、本棚が置いてあった。
「この棚の中かしら。」
 私は一番下の棚に付いた扉を全部開けてみた。だけどみんな不発。
「あ、あの上のやつに似ていた気がするぞ。」
 振り向くと、フレディーは本棚の一番上を見つめていた。するとそのこにほこりをかぶった黒い箱が・・・。
「あっあれね。」
 私は急いで、机に向かい合わせで置いてある椅子を持ってきて迷わずその箱を持ち上げた。

「ごほごほ・・・。凄いほこり・・・。」
 それを、薄目で見つめるフレディーも顔をしかめた。
 私はゆっくりと蓋を開けた。まるで宝箱を開けるときみたいに。

 中には数冊の大学ノートが入っていた。内容は犬種ごとのスタンダードとカット方法の安直、学校の教科書なんかよりもずっとわかりやすく予習するのにぴったりのノートだった。いちいち調べたり考えたりせずにすむように作られた、手軽で、だけど、とっても頼りになる参考書。これこそが虎(とら)の巻。
 シュナウザー、アフガンハウンド、ヨークシャーテリア、ウエストハイランドホワイトテリア、コッカースパニエル、スコティッシュテリア、ワイアーフォックステリアにスプリンガー、なかなかお目にかかることの無いベトリントンテリアや、アフガンハウンドのカット方法まで丁寧にかいてあった。そしてそこには、カットの手順とポイントがイラストと一緒に書き込まれていた。

「凄い、凄いはこれを書いた人。」
 夢中になってノートを読み漁る私を横目に、フレディーは大きなあくびを浮かべていた。
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