水色のエプロン
「ネオ？ネオは言葉が話せないの？」
　私はネオをソファーの上に下ろした。チリチリと首に付いた小さな鈴の音が鳴った。ネオはブルブルと体を振り、耳をパタパタと鳴らすと、そのままその場にちょこんと座り込んだ。
「折角犬と話ができるようになったと思ったのに･･･。ネオは口が聞けないなんて･･･。」　
　私は小さくため息を付いた。期待はずれのプレゼントの蓋を開けたときみたいに。
「つまんないの･･･。口が聞けないなんて。」
　私は自分の部屋にネオを残し、リビングに戻り夕食を食べることにした。
「今日はお手伝いで、館山のお店に行ってきたんでしょ？」
　食事を私に用意してくれていたお母さんがそう言いながら、私のお茶碗にご飯をよそった。
「うん、行ってきたよ。」
　それよりもネオと話が出来なかったことに、私の気分は行き止まりのトンネルに迷い込んだみたいな気分になっていた。
「どうだったの？」
「普通にちゃんと仕事してきたよ。それでフレディーっていうサモエドがいて･･･。」

　その犬と友達になった。

　そう言おうと思ったけど、私はお母さんにも、この事を内緒にしておくことにした。

　部屋に戻るとネオは、部屋を出たときに座っていた場所と同じところで静にまるまり眠っていた。
「つまんない、お話が出来ないなんて･･･。」
　小さくつぶやいた私の言葉にネオは目を覚まし、その場所から静に私を見つめていた。
< 60 / 132 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop