水色のエプロン
十時から、佐藤ポアロ(シュナウザー)シャンプー、カット
一時から、吉野マーフィー(マルチーズ)シャンプー、カット
三時半から、小沢モモ(フレンチブルドック)シャンプー

「ポアロ・・・。シュナウザー・・・。」
 私は自信のなさから、ため息を付いた。
「朝から、そんなため息を付いたりするなよ・・・。こっちにも嫌な気分が移るだろ。」
 その姿を見たフレディーがしかめ面をしながら口を付いた。
「何よ、朝の挨拶もしてくれないくせに・・・。私の気も知らないで、ため息を付くなだなんて・・・。」
 足元もフレディーを見下ろすと、ご機嫌を損ねたような顔をしてフレディーがつぶやいた。
「だからそれは、アズがちゃんとオイラの言葉に耳を傾けてないからだろ・・・。」
 そう言うとフレディーはふて腐れて庭へと出て行ってしまった。
「機嫌悪くしちゃったみたい・・・。」
 私は自分の鞄の中から、昨日もって帰っては見たものの一度も開かなかった、シュナウザーのトリミングについて記されたノートを取り出した。
「これを見ながらカットを進めなくっちゃ。」

「おはようございます。ちょっと早かったかしら。」
 ドアが開きシュナウザーを連れたマダムがお店の門を潜った。
「いらっしゃいませ。佐藤様ですね。こちらがポアロちゃん。」
「はい。そうです。今日もいつも通りのカットでお願いします。」
「かしこまりました。他に気になるところなどはありますか?」
 私は佐藤さんにいつもどおり質問をした。
「そうねぇ。耳の中の毛が沢山生えてるから、それをよく取ってもらえるかしら。」
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