水色のエプロン
私はポアロを抱き上げトリミングテーブルに乗せた。スリッカーブラシで一通りブラッシングし、コームを通す。
「うん、今日は毛玉ないみたい。シャンプー前にバリカンで荒刈りをしようと思ったけど、背中の毛はほとんど伸びていなかったので、先にグルーミングを済ませることにした。爪きりをし・・・。
「そうだ耳の毛を念入りに抜いてって言われたんだわ。」
「え・・・。僕耳の毛抜かれるの大嫌いなんだ。」
「ポアロ、そんなこと言わないで。あなたのママに言われたのよ。それに耳の中が綺麗な方が、音もよく聞こえるし、スースーして気持ちいいでしょう。」
「ママが言ったの?」
「そうよ。」
 ポアロはとっても聞き分けのいい子で、言うことを聞くようにって教えると、素直に耳の毛を抜かれるのを我慢してじっと堪えていた。
「ポアロっていい子ね、じっとしていてくれたからすぐに綺麗に耳掃除が終わったわ。」
 そう言って褒めて頭を優しくなでると、ポアロはちょっと自慢げに、自分はちゃんと人間の言うことを聞くことのできる、名犬なのだと私にほのめかした。自分でそんなことを言うなんて。なんだかおかしく感じたけど。
「そうね、ポアロ、あなたは名犬よ。」
 私がポアロにそう言うと、ポアロはまんざらでもなさそうに、素直に喜びの顔を見せた。そこには謙遜などはなく、犬って人間以上に素直な生き物なのかもしれないと、私は心の中でそう思った。
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