水色のエプロン

　時折少し離れて全体のバランスを確認する。
「なんとなくいい感じになってきたかも。」
「ふぁ～ぁ。」
　その時だった、ポアロが大きなあくびをしたのは･･･。
「退屈になってきた。脚も疲れてきたし、もう座りたいよ。」
　そう言ってポアロは数回脚を踏み鳴らし、腰を下ろそうとした。
「わわわ、まって！」
　私は慌ててポアロのお尻を持ち上げた。ここで座られてしまったら、折角整ったカットが崩れてしまうもの。
「だめよ、ポアロ、早く終わりたいのならなおさら、座らないようにしてくれなきゃ。折角立ち上げて整えた毛が寝てしまうわ。後半分で終わりだから、もうちょっとだけ我慢して。」
　ポアロはもう一度あくびをした。少し涙目になったうるんだ瞳がとてもかわいかった。
「じゃぁ、早めに終わらせて。だけどちゃんとかっこよくしてくれなきゃ嫌だよ。だって僕は賢いだけじゃなくってカッコよくってハンサムな犬なんだから。」
　まっすぐな瞳で、真剣にそんなことを言うポアロが愛おく思えた。
「わかったわ。もう少しで、とってもかっこよく変身できるから、後ちょっと辛抱してね。」
　飼い主の言うことを守り、愛情を受け止める犬達。愛情を注げば注ぐほど、犬達の心も豊かになるのだと私は思った。まるで人間の子どものように、時にわがままを言うこともあるけれど、だけどやがて自分のことを好きになり、そして飼い主と心を通わすことができる。