水色のエプロン
「え?ほんと?」
 私は、うん、と頷いた。するとポアロはしっぽを振った。言葉なんかないのに、その行動でポアロがどれだけ喜んでいるのかが、私のハートに伝ったような気がした。
「かっこよくしてあげるから楽しみにしてね。」
 私はポアロにそう言い、ノートの次のページを開いた。するとそこに何枚かのシュナウザーの写真が挟まれていた。
「あれ?この写真のカット凄く上手。」
 数枚の写真には大胆で勇敢、明るく活動的なシュナウザーの内面まで見て取れるほど、美しくトリミングされたシュナウザーがステイのポーズで写されていた。
「カッコいい。見てポアロ。」
 ポアロの目の前に写真を差し出した。するとポアロは目の色を変えて喜んだ。
「もう少しでポアロもこんなふうにかっこよくなれるよ。」
 ポアロはしっぽをもう一度振って、その感情を私に伝えた。

 シュナウザーの頭は四角く見えるように。スカルよりはみ出す毛はシザーで整える。ウイスカーは鼻の上からセンターで分けて整える。生え際はスイニングで自然に。アイブローは目を深く見せる。アイブローの先端はマズルの2/1 の長さを目安に少し内側にカーブをつけるとよりシャープなラインを表現できる。目を深く見せるために、アイブローを捲くり上げ内側のまつげの部分だけをカットすると、アイブローが崩れにくく、より深い目にすることができる。
 学校では習わなかった裏技がノートには沢山書き込まれていた。
私はまるで人間の美容師が、切抜きを持ってきたお客さんの注文
を受けている時の様に、何度も写真とポアロの顔を見比べハサミを動かした。
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