水色のエプロン
一時から、吉野マーフィー(マルチーズ)シャンプー、カット。
吉野さんがマーフィーを連れてくるのと入れ違いに佐藤さんがポアロのお迎えにやってきた。
「お待ちしてました。今日はちょっと、イメージを変えて、ポアロちゃんを凛々しくてシュナウザーらしいスタイルにしてみました。今ポアロちゃんをお連れします。」
 私は、お勘定を済ませた佐藤さんにそう告げトリミング室のポアロをゲージからやさしく外へ連れ出した。
「ママ気に入ってくれるといいわね。」
 私は佐藤さんに聞こえないようにポアロにこっそり耳打ちをした。
「ボクのこときっとカッコいいーって言ってくれる。」
 私は頷きポアロを床にそっと下ろした。するとポアロはリードを引き一目散に佐藤さんの足元に駆け寄った。断尾した短いしっぽを小刻みに振り、飼い主さんに幸せな気持ちを伝えようとしているようだった。後姿からポアロの感情が読み取れる。
「あらまぁ、ポアロちゃん。凛々しい男の子になっちゃって。カッコいいわねぇ。」
 佐藤さんはそう言って、アロの頭を優しくなでた。
 もちろんポアロも佐々木さんの言葉を理解しているのだ。
「ほらね、やっぱりママ僕のこと褒めてくれたよ。」
 ポアロは振り向いて、私にそっとそう言った。私は大きく頷いて見せた。
「ポアロちゃんはトリミング中も、凄く言うことをよく聞いてくれました。とっても賢くて素直ないい子ですね。」
 私はそう佐々木さんに言って、ポアロをつなぐリードを手渡した。
「あら、ポアロちゃん。トリマーのお姉さんが褒めてくれたわよ。よかったわね。」
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