探偵は、言った。
革靴は少女の前で止まった。
先程まであの音を。
あの不愉快で、恐ろしくて、それでも求めていたあの音を。
鳴らしていた革靴は何とも年期が入った、焦げ茶色のものだった。
あぁ、あの革靴が黒色なら良かったのに。
少女は思った。
そうしたら、このぼやけた空間で異質なものだと認める事が出来るのに。
その年期の入った焦げ茶色は、あまりにもこの空間にマッチしているではないか。
「あなたが、犯人ですね」
もはや疑問系ですらない、その言葉。
革靴の先端が向けられた先は。
私の真横。
少女の妹に向けられた。
あぁ、遂に来てしまった。
少女は絶望した。
一体何に?
革靴の音が止まった事に?
真相が明らかになる事に?
横にいる妹が暴かれる事に?
いいえ、いいえ違います。