君ノ声
女は砂で汚れた足を洗うためか、それとも水遊びをするためなのか分からないが、再び腰掛けて水道に足を投げ出した。
俺はため息を1つ零して、再び携帯に視線を落とす。
そんなときだった。
突如携帯に視線を戻していた俺の頭上から大量な水が降りかかった。
暫し携帯を片手に固まる。
「………」
何を思ったか、上を向いた蛇口から盛大に水をぶちまけたらしい。
もちろん近くにいた俺を含めた2名はありえないほどビショ濡れだ。
「………、」
少し間を空け、あり得ないほどの頭上から降りかかった水の量にブチ切れた俺は、ゆらりと、ゆっくりした動作で携帯から顔を上げる。
そして眼前の女を、今までにないくらいの怒りを露にして睨み付けた。
もちろんのこと、女はビクリと肩を震わせる。
けれど黙っていてはヤバイと悟ったのか、女は慌てて口を大きく開閉しだした。