君ノ声
お経でも唱えるかのように顔の前で両手を合わせる女。
その格好から謝っているんだろうことは理解できた。
無言で睨み続ける俺。
女はそんな俺に焦りを隠せない模様。
髪を伝って、雫が制服に染み込んでいく。
せっかくワックスで髪を整えてきたというのに最悪だ。
怒りを隠すことなくビシビシ放ち続ける俺を、どうしたらいいか分からないでいる女は裸足のまま水道から降りると、鞄を漁り始めた。
その中から細長い薄ピンク色がかったタオルを取り出すと、慌てて駆け寄ってくる。
そしてやっぱり何を考えているか分からない。
「ぅ…わ…っ?!」
俺を押し倒す勢いで座っていた場所に座らせると、丁寧の欠片もない拭き方で俺の頭をガシガシとタオルで拭き始めた。
あまりの激しさに頭が前後左右に振れ、首が痛い。
「こ…んの…テメェ…っ」
渾身の力で―――とは女相手にさすがの俺でもいかなくて、でもそれなりの力を出して、女の両手首を掴んだ。