君ノ声
女の持っていたタオルが俺の膝に落ちる。
振り払われるとは思っていて、まさか掴まれるとは思っていなかったらしく、俺が女の両手首を掴むと、女は驚いたように目を見開いた。
女は無抵抗。
いくら暴れても、男の俺相手に敵わないと分かったんだろう。
俺は女の手首を掴んだまま。
手首を掴むと、ちょうど銃を向けられて、何もしないことを示すようなポーズになる。
女は〝降参〟とでも言うように眉を垂らして唇を噛んでいる。
殴られる、とでも思っているのだろうか?
掴んだ手が微かに震えていた。
俺はジッと見続ける。
なんだか胸がザワザワする。
調子を狂わされっぱなしの俺は、やっぱりこの状況展開が気に入らないらしい。
だから俺は言ってやった。
目の前の事実を。
不適な笑みを口元に浮かべながら。