君ノ声



「透けてるぜ?」



女の手首を掴んだまま、目の前の事実を恥じることなく告げた俺。


そんな俺の言葉がいまいち理解できなかったのか、視線を俺と同じく下に移し、言った言葉の意味が理解できた瞬間、顔を真っ赤にして掴まれている手に力を入れた。



しかし無意味。



急に力が加わったとはいえ、女ごときの力に負けるほど俺の力は甘くない。


女は顔を真っ赤にさせたまま、慌てて隠そうとするが俺がそれを許さない。



水をぶっ掛けられたんだから、このくらいの悪戯なら許してほしいもんだ。



女は恥ずかしさのあまり、涙目になっていた。



こんな初々しい女を初めて見た俺は、少なからず女に〝興味〟を持っていた。



〝は な し て〟



何度も何度も、大きく口を開閉させながらそう言っているのが分かった。



弱い女。


泣かれたりしたら迷惑だから、俺は女の手首を開放してやった。



女は慌ててしゃがみ込んだ。



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