君ノ声



そんな時、ナイスタイミングで保健室の裏扉が開いた。



「そうか!」



同時に女の声。



「待たせてごめ――――」



けれど女の前にいる俺を見た瞬間、裏扉から出てきた女の顔が引き攣ったのが分かった。



ほらこれだ。


普通はこんな反応をとるもんだ。



〝そうか〟と呼ばれた女は、裏扉から出てきた友達を見て立ち上がる。


胸を両手で隠したまま。



〝そうか〟の友達は俺を変なものでも見るようにしながら、女の元までやってきた。


そして関わらないように耳元で「早く行くよ」と囁き、〝そうか〟の手首を引く。



しかし〝そうか〟はその場所から歩き出さなかった。






ほら。



分からない。



俺は完全に狂わされる。






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