君ノ声
〝そうか〟はもう一度ペコリと頭を下げると、友達と校舎内に戻って行った。
残されたのは俺と〝そうか〟の鞄。
そしてこのよく分からない、好奇心に似たような感情。
…何なんだ。
長い黒髪に長いスカート。
可愛いと有名なこの馬鹿学校の制服が、ダサいと思ってしまうほど、きっちりと着こなされた制服。
ピアスや化粧など、そういうものは一切なかった。
だからなのか。
どうなのか。
「〝そうか〟…ね」
意味もなくどんな漢字なんだろう、なんて考えてしまった。
俺は〝そうか〟から借りたタオルでもう一度頭を拭く。
そしてタオルを肩にかけ、自分のぺちゃんこな鞄と〝そうか〟の何が入っているのか分からない、重量のある鞄を持ち上げ、立ち上がって裏扉へと向かう。
ふと。
何かが頬を掠めたような気がして振り返る。
もちろんそこには誰もいない。
「………」
俺は横目でさっきまでいた場所を見つめると、何も言わずに裏扉を開けた。