君ノ声
…っち。
女は自分の〝モノ〟を見せ付けるようにして、下から上へ這って来る。
普通なら〝色っぽい〟と思うんだろうが、今の俺にはなんだかその光景が、ホラー映画のようにしか思えなかった。
俺は視界に広がる〝モノ〟から視線を横にずらす。
女はより一層体を密着させ、尚且つ俺の脚に自分の脚を絡ませながら、キスができるほど顔を寄せ、小さく小さく呟くように囁いた。
「……しよ?」
躊躇いがちに言うけれど、そんなことがないことは知っている。
完璧なネイルが施された指が俺の頬を下から上へ、ジリジリと追い込むように触れられていく。
あぁ、そういえば、と思い出す。
こうして恥らいなく、簡単に他人に自分の体を密着させて、寄せ上げた胸を大胆に見せ付ける女もいれば、さっきの〝そうか〟ように透けた程度で顔を真っ赤にして恥ずかしがるやつもいるんだった、と。
透けていることを適視して、言ったこっちが恥ずかしくなるほど顔を真っ赤にした〝そうか〟を見てしまったせいか、〝コッチ〟が当たり前だったのに何も感じなくなっていた。