君ノ声
女はもう一度俺の名前を呼び、疑問を口にした。
「…どうしたの?」
女は不安そうな顔をしたまま問うた。
そりゃ誰もがその疑問を持つだろう。
来る者拒まずの俺が、初めてこうして自ら〝拒否〟を示したのだから。
俺は向き合うように顔を正面に戻し、女をどかすように、無理やり起き上がった。
女は予想外な俺の行動に、慌てて後退する。
軽くなった体。
けれど女が跨っていることには変わりがない。
そこで1つ、
「…はぁ」
息を吐き出した。
けれど女はため息を零したと思うのだろう。
その証拠に眉を顰めたのが分かった。
俺はそんな女に気づかないフリをして、乱れた髪を右手でグシャグシャと直しながら告げた。