君ノ声
〝そうか〟が退室しないことを確かめると俺は女に視線を移し、コイツをどうしようかと考える。
この状況じゃ俺が怒鳴らない限り、この女は退室しようとしないだろう。
1秒でも早くこの体勢から脱出したい俺は考えた。
そして出た結果。
利用できるものは利用させてもらう。
「〝そうか〟」
初めてその名前を口にする。
どういう漢字なのか、なんてふと考えた。
俺に名前を呼ばれた〝そうか〟は驚いたように肩を上げ、目を見開く。
でも〝そうか〟はすぐに、なに? とでも言いたげに首を傾げた。
相変わらずすごい度胸だな、なんて思う。
さっきもそうだったが、今も同様に〝そうか〟は逃げようとしない。
もし俺がこんな面倒くさそうな状況の中に来たら、声をかけられようが逃げることをまず第一に選ぶだろう。