君ノ声



この対処は間違っていない。


これならばどう見たって必要最低限のことをしたようにしか思えない。



〝そうか〟はペコリと頭を下げる。


そして頭を上げる。


どうしたらいいのか分からない微妙な空間に困っているようだった。



女はそんな〝そうか〟を見て、もう一度ため息を吐くと立ち上がった。


どうやら〝そうか〟の外見を見ただけで、〝敵〟として扱うレベルではないことが分かったようだ。



俺と〝そうか〟の間に何もないことを思ったらしい女。



「…また今度ね」



不機嫌そうに眉を寄せ頬を膨らませてそう言うと、俺の頬に口付けして保健室から出て行った。



いつもなら唇にしていただろう行為。



けれど今日の俺の態度がいつもと違ったことを感じて、戸惑いながらも頬にキスという選択をしたんだろう。



一応空気は読める奴らしい。






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