君ノ声
そう―――――思っていたはずなのに。
〝そうか〟は鞄の中からボードを取り出した。
そしてボードにマーカーを走らせてひっくり返す。
【彼女さん? 邪魔だったんじゃないの?】
なんとも素直すぎる質問だった。
ボードを暫し見つめ固まる。
「…っはは」
思わず笑い声が漏れた。
そんな俺を見て〝そうか〟は不思議そうに首を傾げる。
なんなのだろう、この子は。
「彼女? そんなまさか」
こんな女と初めて会ったせいか、好奇心が膨らんで知らずうちに饒舌になってしまっている俺。
いつもはこんなに他人と話さないのに、なぜか〝そうか〟相手だと口が動いて言葉を吐き出してしまう。